戦国サイダー

「いや、儂はもう少し時間がかかるものかと……」


「あんな切り方してるからです。というか包丁に慣れてないのなら、触らないで下さい」


「刀も包丁も同じではないか」


「断じて違います」



せっかくお風呂に入ったのにぬか漬けを触ってしまった手を、答えながら丁寧に洗う。


横目で見た虎の顔は、何やらふてくされてるような、ご機嫌斜めのような。



「……まあ良い、儂は飲み足りぬ。暫し相手をしろ」



相変わらず傍若無人のような、いや「のような」ではなく「だ」か。


酔っぱらい……には見えないけど、お酒入った人の相手は嫌なんですけど。



「儂はあれぐらいで酔わぬ」



その言葉のあとに「いいから従え」という台詞がついてきそうな瞳。


逆らえないのはわかってます。



逆らったら怖いですから。



渋々と了承の意を見せ、ぬか漬けの器とサイダーのペットボトルを持って茶の間へと移動すると、そこには見事に潰れた兄が横たわっていた。