「知ってるも何も、儂が幼い頃からある道だ」



返事はいつもと変わらず、人ひとり背負って歩いているにも関わらず、息ひとつ上がってない。



「じゃあこの先にあの木があるのも知ってた?」


「ああ。尤も、もっと若い欅だがな」



ケヤキ、確かに樹齢千年、とかいうのを聞くことがあるけど、あそこの木も長生きしてるんだ。


でも天然記念物とかになってるって話聞いたことないけどな、そこまでじゃないのかな、それかみんな知らないか。


実際私も、ついさっきまで忘れてたし、というか欅って今初めて知ったし。



「変わらぬものもあるのだな」



すごいなぁ、なんて感服していると、ぽつり鬼虎が嬉しそうに呟いた。


表情はわからない、でもちょっとだけ眉は離れてるんじゃなかろうか。



ひとり勝手に外出したときも、もしかしたらそういう安心感が欲しかったのかもしれない。