気がつけば、あれほどバクバクしてた心臓はすっかり平静を取り戻していて。



あれだけごちゃごちゃしてた私の頭の中はもう、整理整頓がされちゃったみたいで。



ただ逆に、私は鬼虎のことは何も知らないんだな、とわかってしまって。



勝手に思い込んで、罵ってしまったことを反省していた。



ところが背負ってもらった瞬間。



「重いな」


「なっ、失礼な」


「冗談だ、娘一人、重いわけがなかろう」



そんなことを言われたものだから。



「……鬼虎なんか大ッキライ」



ついぼそっと口にしてしまって。



それに鬼虎が笑いながら。



「無関心でいられるよりも、嫌われてる方が随分と良いな」



なんて言うから、私はその後頭部めがけて、小さな頭突きをお見舞いしてやった。