「……構わん」



ほんの少し、一瞬だけ間をおいて。


とても小さかったけれど、鬼虎の声が聞こえる。



顔を上げれば、まだそっぽ向いたまま。


でもその表情は、さっきまでの不機嫌さたっぷりのものじゃなくて。



昨日見た、照れ隠しのように、口を一文字に結んだもの。



ああ、もしかして。



単にいじけてただけ?



「……照れてる?」



そう思ったら本当に子どもみたいに思えてきて、ついつい口にしてしまう。


尤もそんな言葉には応えてくれなくて、ただ眉を寄せて私を睨んできただけだった。



ちょっと、可愛い。



「こんなところにいたら体調崩すでしょ。うちに戻りたいって言うんなら……」