「女々しいだろ? オレ、未練ありあまってるからな」



そう笑いながら、さらっと言ってのける。


その雰囲気も、変な言葉のチョイスも何も変わってない。



「でも、私は……」


「あー、いいって。わかってっから。それは、オレの問題」



そこで初めて笑う、犬みたいに。


いや、この人を表現する動物は専ら『狼』だったんだけど。



「ま、そんな思李にオレからひとつアドバイス」


「アドバイス?」



いきなり話題が変わったことについていけない。


今まで自分の話してたよね?



きょとんとしてたのか、由惟さんが私の顔を見てその細い眉尻を下げた。



「あらゆる詐欺のうちで第一の、最悪のものは自己欺瞞である」


「はい? 詐欺?」



いきなりのお言葉に、聞き返しても由惟さんはただ笑うだけ。