「気づいちゃったら後はもう転がるだけだからねぇ」


「ひえぃっ!?」



いきなり聞こえた声に、びっくりして振り返る。


階段の下に、にやにや笑っている兄の姿を確認。



「なっ、なんで後ろにっ……」


「え? 虎に着るもの出さなきゃって。いくらなんでも上半身裸であんな男前連れまわすわけには行かないでしょう?」



楽しそうな笑みを浮かべ、ゆっくり階段を上ってくる兄が、私の左肩をぽんっと叩いた。



「後悔だけは、するなよ?」



そして耳元でそう囁く。



「さー、虎は何が似合うかなー」



私を通り越して、そんなことを呟きながら兄は二階へと消えて行った。