後ろの方から「あいつは気が触れているのか?」とか再びな台詞が聞こえてきたけど、気にしないで廊下を進む。



階段を登りつつ、慌てふためく鬼虎を想像してみる……もちっとも思い浮かびやしない。


それどころか家に連れて来たときの泣いている顔を思い出してしまった。



その上涙繋がりで、さっき私が泣いていたときの鬼虎の顔、その後の微笑んだ顔。



「……だーっ!!」



何を思い浮かべてるんだ、デリートでしょ、こんなものは!



階段の中腹で頭を激しく左右に振ってみる。


でも、ちっとも振り切れない。



それどころか縁側での出来事が次々リプレイされていって、体温が上がってゆく。



落ち着け、私。





違う、違うんだから。