ここに来る数分前。

俺は校舎の階段の踊り場にいて、そこで初対面の女の子から告白されていたんだ。

確か同じ学年で、違うクラスの子だった。



“入学式の時からずっと好きだったの”

言葉に詰まりながらも、伝えられた精一杯の気持ち。


“ごめん、彼女がいるから”

俺はなんの躊躇もなく、きっぱりとそう言った。


もう少し、優しい言葉をかけてもよかったと思う。



でも……

俺にとって、悦子以外の女の子なんてどうでもよかったし。

泣こうがわめこうが、俺が他の女の子に気持ちが揺らぐことなんてあり得なかった。