――武人side*高校一年 「悦子!」 放課後の学校の靴箱。 遅れてやってきた俺が声をかけると、悦子は嬉しそうに微笑んだ。 「ごめん、遅くなって」 「ううん。先生、何の話だったの?」 「……いや、今日さ、俺、宿題忘れてさ。その話」 「へぇ。珍しいね、武人が宿題忘れるなんて」 悦子はくすくすと笑った。 付き合い始めて間もない悦子に、俺が嘘をついたのはこれで何回目だろう。 今だって、遅れてここに来たのは先生に呼び出しを受けたからじゃなかった。