「やっぱり好きなんだ」 あたし…… なんでこんなに腹を立てているんだろ。 理由はちゃんと分かっているのに。 でも、もう一つ別の理由が存在しているような気がする。 あたしはそれを、認めたくなかった。 「――梓」 「だから、呼び捨てにしないで!」 「……ちゃんと話すよ。悦子のこと」 なによ…… まるで、元カノのことで揉めている恋人同士みたいじゃない、あたしたち。 だいたいあたしは、武人の過去なんてどうだっていい。 武人が誰を好きであろうと、そんなの知ったことじゃない。