覚えていないのも無理はない。 話したのは、ほんの二言くらいで。 信一くんはすぐに武人に連れて行かれたんだから。 「武人のお友達」 にっこりと笑って言うものの、微妙に顔が引きつる。 ヘタレと友達なんて、嘘でも言いたくないよ。 でもこの場合、しかたない。 「あっ、確か、前に正門のところで……」 「そうそう」 「あのキレイなお姉さんは?」 「はっ?」 あたりをキョロキョロと見渡す信一くん。 どうやら、あの日最初に信一くんに声をかけた、フェロモンばりばりの麗を探しているようだ。