心の中で、「一」と呟いた瞬間。 廊下の方から、ドタバタと慌しく駆け寄ってくる音が聞こえてくる。 ――来る……、来る…… その足音はあたしの教室の、後ろのドアの方でぴたりと止んだ。 そして…… 「あっ! いたー、良かったぁぁぁ!!」 感極まった、悲鳴に近い叫び声に、一瞬だけ教室がしんと静まり返った。 「梓ちゃーんっっ!」 ――来たああぁぁぁぁぁっ!! カウントダウンしながら頭を抱えていた両手。 急に力が抜けて、あたしは自分の額を机の上にぶつけてしまった。