「――どうして、さくらでんぶ入りのおにぎりなのか。その理由を知りたくない?」

「え……? 嫌がらせ、でしょう?」

「うーん……。どうして梓ちゃんは、悪い方にしか考えられないのかなぁ」



なぜか、ヘタレ口調になる武人。

悪い方にって……、それしか考えられないでしょうが。



「理由を教えてあげようか?」

「……聞いてあげてもいいけど?」

「聞いたら、梓ちゃん、絶対に泣くよ?」

「……上等じゃない。泣かせられるもんなら、泣かしてみなさいよ」



強がるあたしに、武人は小さく笑う。

そして、武人は抱きしめていた片方の手を外すと、後ろからハンカチを差し出した。



「……コレで鼻をかむのだけは、やめろよ?」