「あ……っ」 「……梓?」 もう一度、“好き”と言えと? 衝動的に告白してしまったあたしに? 悦子さんとヨリを戻したあんたに……? 「か……」 「“か”?」 「カナブンがいるっ! 武人の頭のうえっ!」 あたしはそう叫んで、武人の頭を指さした。 カナブンなんて大嘘なのに、虫嫌いの武人は真に受けて、情けない悲鳴を上げる。 「ひ……ひぃっ!」 慌てふためきながら頭をブンブン振っている武人をその場に残し、あたしは猛ダッシュで走り去った。