頬に武人の髪の毛が触れて、あたしの心臓は暴走し始める。
耳元で囁くもんだから、全身にゾクゾクと鳥肌が立つのを感じた。
やばい……、マジでやばい……。
あれっ?
呼吸って、どうやってするんだっけ?
ドキドキしすぎて呼吸困難寸前なうえに、あたしは、酸素を取り込む方法さえ忘れてしまいそうになる。
「バ、バカじゃないのっ! カナブンごときで泣き喚くヘタレのくせにっっ」
未だにあたしにピタリとくっついている武人を、両手で思い切り押しのける。
カナブンの死骸で泣き喚いたことを晒されているのに、武人は平然としていた。
「しかたないだろ? 嫌いなもんは嫌いなんだから」
「……て言うか、手紙! その手紙はなにっ!?」


