ズキズキと、さっきから胸の奥の方がきしんでいる。 ヘタレ男を装っていたときから、こいつには振り回されっぱなしだったけど。 仮面を剥ぎ取ってからは、こんなに気持ちをかき乱されるなんて。 「バス停で初めて梓に会ったとき、悦子に対する未練が一気に吹き飛んだんだ」 「……呼び捨てにしないでよ」 “梓”と、武人があたしをそう呼ぶたびに、自分の胸がドキッと大きく跳ねることに気づく。 ……まさか、あたし……。 「強い優しさを持っているなぁって」 ……まさか……、いや、そんなはずない……。