たわいのない会話をするのが、なんだか楽しい。

 打算とか、駆け引きとか、そういったものが一切必要ない相手は初めてかもしれない。

 女からは『理想の王子様』としての自分ばかり求められ、男からは何となく距離を置かれていたから。

 そのことに疲れていたわけでも、不満を感じていた訳でもないけれど。

 オレの容姿や能力や性別とは無関係に、一人の個人として接してくれる事が、とても心地よく感じた。

 絵理を落とそうなんて考えるのは、もうやめよう。

 恋とか、愛とか、そんな事とは無関係に笑い合える今の関係が心地よい。

 それに、『恋人』などという保険がなくたって、絵理はオレに心を配ってくれるのだから。