「陣。普通のデートに着ていく服装は、これでおかしくないだろうか?」

「いいんじゃねえの?」

 今日は、青司とデートに行くらしい。

 数日前に、絵理は何を思ったのか、普通のデートの作法を教えてくれ、と質問してきた。

 デートなんてのは本来、二人で楽しめればそれでいいのだが、絵理はどうしても普通のデートがしたいという。

 青司に聞いても、絵理の行きたい所でいいと言われてしまい、途方に暮れていたそうだ。

 オレは半ば呆れながら、半ば自分の馬鹿さ加減に嫌気が差しながら、絵理にオススメデートコースを教えた。

「まったく。せいぜい楽しんできやがれ」

「そなたは何故そんなに不満そうなのだ。
 心配せずとも土産くらいはちゃんと買って来るから、あまり拗ねるでない」

「土産が欲しいわけじゃねええ!」

 不意に、絵理の携帯が鳴った。

 無機質なベル音が部屋に響く。

 絵理はバッグに入れてあった携帯を取り出し、オレに背を向けて電話に出た。