就職、という道を選ばなかったのは、単にこのまま絵理のそばでバイトを続けたかったからという単純な理由だった。

 絵理と出会って、もうすぐ一年になる。

 最初に会ったときは変な女だと思った。

 思考回路が独特すぎて付いていけず、無駄に疲れる日々を過ごしていたと思う。

 だが彼女は時々、あまりにも鋭利にオレの心に切り込んできた。

 それは、何気なく言った一言だったり、何気なく取った行動だったりと様々だが、自分自身ですら気付かぬうちに被っていた仮面をも粉砕するほどの威力だった。

 けど、それはけして不快ではなく。

 心の奥にいつの間にか寄り添っていて、暖めてくれるような、そんな不思議な感覚だった。