離れには照明がついており、絵理はまだ就寝していなかった。

「戻ったか」

「悪い。連絡もいれずにだいぶ遅くなっちまった」

「あまり気に病むな。たまにはこんな日もある」

 絵理は何も聞こうとはせず、門限を大幅に破った事を咎めたりもしなかった。

 寝巻きにしている浴衣に着替えていた所をみると、オレのことを寝ずに待っていたのかもしれない。

 こういったさりげない優しさが、今のオレの心に染みた。

「私はもう寝る。陣、そなたも休め」

「そうすっかな。隣の部屋で寝るわ」

 そう言い残して来客用の部屋に行こうとした時、絵理の声がオレを引きとめた。