しかし、十五の女の子の専属、とはね。ずいぶんとやりやすそうだ。

 新しいご主人様の御剣絵理(みつるぎえり)は、今年高校生になったばかり。

 オレよりも二つ年下か。

 自分で言うのもなんだが、容姿には自信があるし、勉強、スポーツでも他人に後れを取った事はない。
 同年代の女なんて、にっこり笑い、甘い言葉を囁けば簡単に手玉に取れる。

 惚れさせて主導権を握ってしまえば、使用人生活も快適なものになるだろう。
 ましてや、相手は世間知らずのお姫様。男に耐性があるとは思えない。

 執事長の佐伯さんに案内されて、広い広い武家屋敷の廊下を進んだ。
 こりゃあ、慣れるまで少し迷うかもしれないな。

 母屋の廊下の終着点には、中庭に面した渡り廊下への出口があった。満開の桜の花が風を受けてそよそよと揺れる。

 渡り廊下の先には、この屋敷の離れと思われる建物が見えた。