空には満天の星が輝き、潮騒が心地よい音楽となって風と共に吹きぬける。
 水平線の向こうに見えるのは、沖縄本島の街の灯(あかり)だろうか。

 さすがの千沙子も派手な打ち上げ花火は手配していなかったようだが、普通の玩具花火でも充分風情がある。

 オレ達は浴衣にうちわという、このまま夏祭りに繰り出せそうな格好で、思い思いに花火を楽しんでいた。

 小雪がねずみ花火を大量に放ってはしゃぎ回り、千沙子は設置した噴出花火に片っ端から点火していく。

 絵理は手に持った線香花火をじっと見つめていて、牡丹、松葉、柳、散り菊と、花火の調子が変わるたびに、その表情もころころと変わる。