「もう、いいじゃない済んだ事なんだし!
 そうよ、民謡よ! ほらほら、BGM変えて!」

「Yeah!」

 ドアマンが陽気に答えると、三線の独特なリズムの陽気な曲が流れてきて、深みのあるバリトンの声が響く。

 うお。この人結構、いや、かなり歌が上手い。
 ぽっと出のJ-POPS歌手なんぞ足元にも及ばない。
 ドアマンにしておくにはもったいないくらいだ。

 この状況で小雪は何か開眼したのか、歌にあわせて、手拍子と合いの手を入れ始めた。

「シーサー♪ シーサー♪」

 おいっ。その合いの手は何か違うぞ!
 沖縄=シーサーという発想は、いくらなんでも安直過ぎやしないか?
 楽しそうな小雪に当てられたのか、絵理も小雪に習って合いの手を入れる。

「シーサー♪ シーサー♪」

 違うから!
 それ沖縄の魔よけの精霊だから!

「シーサー♪ シーサー♪」

 シーサーコールに青司まで侵食され始めた。
 そうだよ。こいつはネタ行動には喜んで飛びつく奴だよ!