千沙子は合計10本の視線にさらされて、こちらを見渡した後で視線を外し、いたずらが見つかった時の子供のような口調で言った。

「だって、あのシチュエーションで、いきなり流暢な日本語が飛び出したら興醒めじゃないの」

 静観していた絵理がここで口を挟む。

「言いたいことは判らんでもないが、皆驚くと言うよりも、置いてけぼりにされたような反応を示していたぞ。
 サプライズを演出するなら、もう少し受け取る側に心の準備をさせる必要があったのではないか?」

 絵理の批評はもっともで、オレ達はいっせいに頷いた。
 千沙子はふくれっ面をして、絵理の言及を逃れるように話題を変えた。