純愛バトラー

「さて、と。烏丸さん。長船君。そろそろ入ってらっしゃいな」

 千沙子が扉に向かって呼びかけると、入り口のドアがゆっくりと開き、小雪がおそるおそる顔を出した。

「た、ただいま~☆ ティラミスと、パイシュー買ってきました」

 小雪が無理におどけて笑うと、長船が続いて部屋に入ってきた。

「いやあ、立ち聞きするつもりはなかったんですけどね。何やら深刻そうな話だったので、中に入るのが憚られまして」

 どうやら、オレは二人が帰ってきていることにすら気付かなかったらしい。

「あー……。気を使わせたみたいで、悪い」

 どこから聞かれていたのだろう。
 他の人間に聞かれていたかと思うと、めちゃくちゃ恥ずかしいんだが。

 長船と小雪はばつが悪そうに、買ってきたスイーツを部屋に備え付けの冷蔵庫にいそいそとしまい始めた。