純愛バトラー

 どんなに絵理に合わせて自分を作ろうと思っても、予想外の行動に翻弄されて、呆気なく素の自分が引きずり出されてしまう。
 だったら、初めから素のままでいるしか方法がないわけで。

 勿論、他の使用人の目がある時は最低限の敬語と、執事らしい態度は取るが、それだけだ。

 それでも、絵理はオレのありのままを受け入れてくれた。

「作っても、どうせ絵理には通用しないからな。空回りするだけならやるだけ無駄じゃん?」

「私も同じ。以前は、貴方に気に入られようと、だいぶ無理してたわ。貴方を離したくなくて、必死だった。ちゃんと私のこと好きになってくれるかしらって、そればかり考えていたわ」

「きっかけは強引だったけど、好きだったよ」

「その『好き』は、私が望んでいた『好き』じゃないわ」

 そこで初めて、千沙子は笑みを崩して淋しそうな表情になった。