「……ごめんね」


楽しい時、一緒に笑ってあげられなくて。

悲しい時、一緒に泣いてあげられなくて。


苦しい時、そばにいてあげられなくて、ごめんね。


一度は疑った。人を拒んだ。


だけどもう一度信じることが、関わることができるなら。俺が、凪の支えになれたらと思う。


俺と凪は家族でもあり、友人でもあり、恋人のようでもある。言い表わせないのが正直な気持ちなんだ。


恋とか愛とか、それすらも超越した、遠い昔、もとはひとつであったような一心同体なところがあるから。


俺はこの家に来て、凪と再び一緒に住めて、祠稀と有須と出逢えて、本当に本当に幸せなんだ。


こんなに幸せな朝はもう、どこにもない。


ゆっくりとベッドから出て、めくれた布団を直すと、凪の頬をもう一度撫でる。


よく眠る凪に頬を緩ませながら、そっとテーブルに置いてあったふたつのマグカップを持って部屋を出た。