「え? 何よ。なんでここだけ通じてんの?」

「何が今なら言えんだよ」

「だからぁ! その言い方がビビらせてんだってば!」

「はあ!? 俺は元からこんなんだからしょうがねぇべや!」


案外凪も祠稀も似た者同士だと思う。


「あ、のっ!」


また始まったふたり喧嘩に割り込む、必死な声。俺も凪も祠稀も、一斉に有須へ視線を向ける。


「け、喧嘩はしちゃダメ……です」


語尾にいくにつれて小さくなる声は、有須の体さえも小さく見せた。


……まずい。また笑いそう。


「何この子……かわいい……」

「てかそれ、突っ掛かってくる凪に言ってんだよな?」

「ちょっと待て! あたしだけ悪者か!」

「喧嘩はしちゃダメなんだとよ~?」


ニヤニヤと口の端を上げる祠稀に、凪はグッと口を噤んで我慢してる。


「……分かった、はい。喧嘩しないよ、大丈夫! ほらっ!」

「今の凪の顔まじウケる」

「はぁあ!?」


百面相に近いくらいコロコロと表情の変わる凪に祠稀は笑い、有須もふたりの顔を交互に見て忙しそうだ。