僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「……なんだそのへろへろパンチは」

「うっさい祠稀のハゲ」

「ハゲてねぇよ!」


知ってるよ。バカじゃないの。

心配だったなら、迎えに来なさいよ。


変なところで恥ずかしがって、結局バレて。そっちのほうがよっぽど恥ずかしいじゃん。


「つーか、殴るなら彗みたいなの出せよ」

「いや無理でしょ。彗、空手上級者だもん」

「はぁぁあ!? マジで!?」

「今はもうやってないけどね」

「……だからか。不憫通り越してかわいそうだわ、大雅。……何ニヤけてんの」

「んー? 別にぃ〜」


ただ、幸せだなと思って。


不信そうにあたしを見る祠稀に微笑んで、エレベーターに乗り込む。


祠稀は何か言いたそうだったけど、けっきょく会話はないまま、あたしたちの家へ帰った。



この時あたしは初めて、彗以外との沈黙が心地いいって思ったんだ。