「なぁ。さっきすれ違ったのって、威光のチカじゃねぇ?」
「はぁ? 誰それ。てか、イコウってなんだっけ?」
そんな会話を聞き過ごしながら、テディベアをポケットにしまった。
代わりに携帯を取り出し、1時を回ってることに驚きながらマンションに帰ると、入り口の塀の前に座る人影を見つける。
「……祠稀? 何してんの?」
「……別に。煙草は?」
なんで若干不機嫌なのよ。ヤンキー座りで睨まないでよ。本物に見えるから。
「買ってきたけど……何? そんなに我慢できなかったの?」
「うるせー、よっ」
立ち上がった祠稀はあたしから袋を取り上げ、先にマンションへ入っていく。
……な、何あれ! ありがとうくらい言えないのか!
イラッとした時、視界に映ったモノであたしの苛立ちは溶けて消えてなくなった。
祠稀が座っていた場所に、灰にまみれた缶が置いてあった。
「……わけわかんない」
待ってたの? もしかして煙草じゃなくて、あたしのこと。



