僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



涙を浮かべたまま振り向き微笑むと、玄関に立っていた彗は驚くでもなく心配するでもなく、大きく1歩踏み出した。


ふわりと香る、彗の匂い。


思い惑うことはなく、彗の腕に包まれた。


彗が抱き締めたわけでも、あたしが抱き締めたわけでもなく、ただ自然に、そうなった気がした。



……あったかい。


この行為に、理由なんてないんだ。


ただなんとなく、触れたくて。温もりを感じたくて。今が幸せなんだと、心に刻みたくて。


あたしが泣いてる理由を、彗は分かっているのかもしれない。


「……彗」

「うん」

「いつか、許せる日が来るかな」


刻まれた傷は消えない。
体も心もボロボロになって。

でも、それでも、あたしたちは生きていかなきゃならない。



生きることを、諦めちゃいけない。