そっと持ち上げて、少し重量感のある箱には“le.milan.”と書かれていた。
これ……近所の、洋菓子屋さん。
「……」
言葉が出ず、ジッと箱を見つめていると、微かに聞こえる先ほどの声。
考えるより先に体が動いた。
マンションの廊下から塀に身を乗り出す。思いのほか下界が低くて目眩がしそうだった。
でも、確かに地上を歩く人影を目に捉えて、涙が浮かんだ。
どうして7階に住んでるんだろう。
1階に住んでいたら、追いかけられたのに。
そう、思った。
豆粒みたいに小さな人影が誰かなんて、きっとふつうなら分からない。
だけどあたしの目に映ったのは、確かに知ってる人で、絶対の確信があった。



