『大丈夫だよ。祠稀がいれば』
そう言って嬉しそうに笑う姿が、俺には見える。
『僕は、祠稀がいればそれでいい。祠稀が祠稀で在れば、それで充分だよ』
なんて身の毛のよだつ台詞。だけど、俺も同じように思ってるのは覆せない事実だった。
コイツに好きとか嫌いとかそんな感情はないけど、弟のようで、双子の片割れのようでもあって。
とにかく、“見捨てない”と口にしたことはある。
何度も、何度も。飽きるまで繰り返したことが。
『同居生活楽しんで? またね、祠稀』
「ああ……またな」
プツリと電話の切れた携帯を暫く耳にあてたまま、7階のベランダから見える景色を眺めた。
太陽が上って、朝が来て、今日が始まる。



