「……俺と出逢ってくれて、ありがとう」
普段口数の少ない彗が、カーディガンのボタンを閉めながら紡いだ言葉の数々。嘘のように、胸の奥に染み込んだ。
「……有須」
全てのボタンを締め終えてくれた彗を見つめると、彗の親指が流れる涙を拭う。
「この傷も、生きた証だよ」
「……っ……」
ぶかぶかで、ずぶ濡れのカーディガン。袖から指先しか出ていない両手で、顔を覆って俯いた。
「……頑張ったんだね、有須」
大きな腕に包まれたと同時に囁かれた言葉に、後から後から涙が溢れる。
……あたし、ずっとひとりだった。
中学のたった三年間。だけど学校という箱のような場所でひとりでいるのは、途方もなく長くて、とても寂しかった。
そんな日々の中で失ったのは、人への接し方と、自分の世界観。
ひとりでいた時間が長すぎて、当たり前だったことが当たり前ではなくなって。残ったのは、保身的な自分だった。



