「いいから有須……っ」
黙ってて。
そう、凪が言いたいのが分かる。
分かってるの。
分かってる。
あたしが黙っていれば、泣き喚かなければ、安全だってことくらい。
だけどできないの。凪に守られることが嫌なんじゃない。嬉しい。だけど、凪の守り方が余りにも悲しくて、つらい。
あたしはそんな凪を、守りたいの。
「最低だよ大雅先輩っ! 最低!」
「有須っ!」
止まらない。
止まれない。
自分の体を投げ出さなければならないのは、凪じゃなくてあたしだ。
あたしは何もかも手放した。過去の自分を、愛してくれた両親を。生まれ育った街にある思い出を。全て全て、置いていった。
ここにいる今のあたしに、凪たち以外に大事にするものなんて、ない。



