「走ってきた様子もないし、ね?」
「帰れ、チカ」
睨む俺と目が合ったチカはビクリと体を揺らしたが、すぐに微笑んだ。
怖くないよ。そう言ってる微笑みではなく、祠稀だ。そう、喜んでる微笑み。
「帰るよ。僕の用は済んだし」
「……」
「祠稀。僕ね、祠稀がいれば何も怖くない」
怖くないんだ。俯いてそう呟くチカに、俺は傘を差し出した。
チカは少し驚いてから目を細めると、傘を受け取る。
「……祠稀。僕等は、……ううん、まあ頑張ってよ。オトモダチの救出」
「いーから早く帰れっ」
悪戯に笑うチカに蹴りを入れると、チカは笑いながら傘を高く高く上げた。



