『あらら……泣いちゃった』
『やめて……お願いっ……あたしはどうなってもいいから!』
『……だってさ。聞こえた?』
聞こえたよ。
『マヌケだね? 彗くん。守りたいなら、離れちゃダメだよ?』
「……うるさいな」
もう、話さなくていい。聞こえたから。
『まあ見つけられなくてもさ、夜には返してあげるよ。……さて、王子様。お姫様を、連れ戻せるかな?』
プツッと電話が切れて、俺は携帯を耳から離した。
耳に残るのは、反響する大雅の声と、特徴ある雨音。それから、チャイムの音。
本来なら今は部活が始まる時間だ。学校のどこかに、有須と大雅はいる。
「……マヌケはどっち」
お互いさまだろ。



