「……有須?」
俺の名前を一度呼んだだけで、有須は何も言わない。
「……どうしたの?」
有須、どうしたの?
「……今、どこ?」
声は聞けたのに、有須が今どこにいるのか不安になった。
どこで、何してるの?
『っ彗! 先に帰っ……きゃっ!』
瞬間、目を見開いた。バシッと何かを叩く音と、携帯が床か何かにぶつかった音がしたから。
手に持たれた携帯を、力いっぱい握り締める。
『……もしもし?』
電話越しでも嘲笑ってると分かる声音に、ギリッと奥歯を噛み締める。
「大雅……っ」
低く、唸るような声に反して、悪魔は笑った。



