「げほっ……う……っ」 俺はただ、トイレから洩れる苦しそうな声を聞いていた。 暗闇に響くそれは、顔をしかめるには充分で、心苦しくなるのにも、充分過ぎるものだった。 ―――ガチャ。 暫くするとドアが開く。 一瞬強い光に目が眩み、次の瞬間には有須の驚いた顔。 「……祠……稀」 口元を拭って出てきた有須に無言でタオルを手渡すと、気まずそうに受け取った。だけど、視線を合わせようとはしない。 タオルで口元を抑える有須の右手に視線を移すと、人差し指と中指の第二関節辺りに絆創膏が貼ってあった。