「なんで……?」
抓られた頬をさすると、彗はキッチンからあたしを見て眉を下げた。
「有須が『なんでもない』って言うから」
「……答えになってない」
「凪はいちいち熱くなり過ぎなんだよ、バカが」
「はぁ!? だって……っ」
「………」
「……あ。風呂掃除してない」
なんなの、あたしは……子供か。
風呂掃除を忘れていたらしい彗がリビングから出て行き、あたしは祠稀に手首を引かれてベランダへ連れていかれた。
夜風と、雨の匂い。夜景は涙で滲んでよく見えない。
「お前が泣きそうな顔してたら、有須が余計に悲しむし、苦しむだろ」
……うるさい、バカ。
祠稀も彗も、なんでそんなに冷静でいられるのよ。
……あたしにはできない。絶対、無理。



