「有須っ!」
マンションまで全速力で走り、その勢いのまま玄関からリビングへのドアを開けた。
「わっ! どうしたの凪! びしょ濡れだよ!?」
真っ先に目に入ったのは、ダイニングテーブルに夕飯を並べてる有須だった。
いつもと変わらない姿に、びしょ濡れのあたしを心配する姿に、涙腺が緩みそうになるのを堪えた。
「凪……どうしたの」
いつの間にか彗がタオルを持ってきて、あたしの頭を拭き始める。
「……」
いつもと何も変わらない光景に戸惑っていると、メールを送ってきた祠稀と目が合った。
「お帰り」
「た、だいま……」
「凪っ、先にお風呂に入ったほうがいいよ! 風邪引いちゃう! 今、準備してくるか……ら…」
風呂場に向かおうとした有須の肩を掴んだ手が、震えている。
「……凪? どうしたの?」
心配そうにあたしの顔を覗く有須。あたしは重い口を開いた。



