「……元気なの?」
主語がなくても分かるのは、あたしと彗がそれほどお互いのことを分かっているから。
「たぶん、元気にしてるんじゃない」
「……逢わないの?」
「逢いたくないもん」
逢ったら、だめになる。閉じ込めた想いが溢れてしまう。だから逢いたくないの。
でも、本当は……心の奥底では逢いたくて、逢いたくて、堪らないことを彗は知ってるんだろう。
彗はそれ以上何も言わず、ブレザーを掴んでいたあたしの手を取って、繋いでくれた。
ここにいるとでも、言うように。ずっとこの手を繋いでいるとでも、言うように。
その優しさが嬉しい。
その優しさが、とても痛い。
でもやっぱりあたしは、この手を離せそうにない。
小雨が降り出した夕刻。
あたしと彗は黙ったまま、並んで帰った。それは嫌な沈黙ではなく、お互いの気持ちが分かってるから、言葉なんていらなかったんだ。
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