僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「……元気なの?」


主語がなくても分かるのは、あたしと彗がそれほどお互いのことを分かっているから。


「たぶん、元気にしてるんじゃない」

「……逢わないの?」

「逢いたくないもん」


逢ったら、だめになる。閉じ込めた想いが溢れてしまう。だから逢いたくないの。


でも、本当は……心の奥底では逢いたくて、逢いたくて、堪らないことを彗は知ってるんだろう。


彗はそれ以上何も言わず、ブレザーを掴んでいたあたしの手を取って、繋いでくれた。


ここにいるとでも、言うように。ずっとこの手を繋いでいるとでも、言うように。


その優しさが嬉しい。
その優しさが、とても痛い。


でもやっぱりあたしは、この手を離せそうにない。


小雨が降り出した夕刻。


あたしと彗は黙ったまま、並んで帰った。それは嫌な沈黙ではなく、お互いの気持ちが分かってるから、言葉なんていらなかったんだ。



.