「あーマジよかった! 予定より早く来たんだけど、つかオートロック開けてもらってここまで来たはいいけど、いねぇから焦った」
「え? 何? ……え?」
「管理人?に俺のこと話してくれてただろ? んで入れてもらったんだけど、さすがに中で待ってるわけにはいかねーじゃん」
肩下まであるブルーブラックの髪を耳にかけながら、美少年は今までの経緯を話す。
「……もしかして」
困惑していた凪は、やっと理解したみたい。
「日向……祠稀?」
凪の問いに美少年は小さめのボストンバッグを肩に掛け直し、俺と凪を交互に見る。
「今日からよろしく」
ブラックデニムのポケットに両手を突っ込んで、口の端を上げる夕刻の訪問者。
それは予定より早く来たふたり目の同居人、日向 祠稀(ひゅうが しき)だった。



