◆Side:彗
「あ」
空がどんよりと曇る日の放課後。
祠稀にサッカー部の助っ人として巻き込まれ、疲労から自販機まで逃げてきた俺の背後から声が聞こえた。
自販機のボタンを押す前に後ろを振り向くと。
「……あ」
た、……なんだっけ? 何先輩だっけ。
「俺のこと分かる?」
分かるけど、名前が出てこない。
黒髪の短髪に、切れ長の二重。鼻筋の通った、筋肉質だけど細身な外見はここ最近で何回か見ている。
……タイヤ先輩だっけ? なんか違う気がする。
「……有須の、先輩ですよね」
「そうそう。よかった、分かってもらえて。大雅だよ。柴、大雅」
目を細めながら自分を指差して笑う、大雅先輩。
……名前口にしなくてよかった。
「彗くんだよね?」
少し離れたところにいた大雅先輩は俺の目の前まで来て、明るい声で言う。



