「あ? どこ行くんだよ凪っ」
「トイレ! 祠稀のボケカスアホッ! ハゲろ女好きバカ!」
「どんだけ捨て台詞吐く気だテメェ!」
「永遠に言ってやる!」
あたしは逃げるように席を立って、廊下に出る。別に腹が立ったからとかじゃなくて、自分に嫌気が差したからだ。
大股で歩いていた歩幅を小さくして、速度も緩めて立ち止まる。
有須が止めてくれてよかった。
何を言う気だったんだ……あたしのバカ。
彼氏は欲しいけど、モテたいわけじゃない。モテなくていい。
あたしは、たったひとりの人に愛されればいい。
あたし以外、誰も見えないくらい。いちばんにあたしを見ていてくれる人に愛されれば……きっと、徐々に満たされる。
もう何年も空いたままの、心の穴が。
彼氏ができることよりも、たったひとりの人に愛されることよりも。大嫌いなあの人に愛されさえすれば、一瞬で満たされるんだけど。
「……愛されないっつーの……」
ぽつりと呟いた言葉は誰に届くわけでもなく。虚しさだけを残して、宙に消えていった。
.



