彗はおもむろに前髪を留めていたハートのヘアピンをひとつ、あたしの髪に留めてくれた。
ちょうどこめかみの上あたりに付けられたヘアピンに触れながら、彗の前髪に残ったもうひとつのヘアピンを見て笑みが零れる。
「凪にしてもらったの?」
「……うん。『見てて邪魔くさい』って言った祠稀のせい」
「……そっか」
あたしは長めな前髪を気にしたことはなかったけど、今日はいつもより顔がよく見える。
彗の優しい笑顔が、よく見えるね。
「帰ろ」
彗はそう言ってあたしの右手を掴むと、一緒に立ち上がる。
あたしと彗はほんの数秒だけ向き合って、手を繋いだまま歩き出した。引っ張られたと言ったほうが正しいのかもしれないけど。



