「……どうしたの、有須」
過去と現在に阻まれたあたしのもとに、ふわりと温かい空気と香りが溶けるように現れた。
「――…」
スッと頭に入ってきた馴染みのある声に泣きそうになった。だけどぐっと我慢して、膝に付けていた顔を恐る恐る上げる。
まるで駅前の明かりを吸い込んでるような、反射してるような……例えようのないくらい綺麗な瞳と目が合った。
「彗……」
「うん?」
なぜか無性に、抱きつきたいよ。
「……お腹痛い?」
あたしと同じ目線にいた彗に、緩く首を振る。
――なんでもないよ。なんでも、ない。
そう言いたいのに思うように口が開かなくて、曖昧に微笑むことしかできなかった。



