「楽しみだよねー。顔知らないんだけど、まあそれもお楽しみ?」
「……大丈夫なの?」
「彗がいるから大丈夫」
少し不安げにした彗にそう言うと、困った顔をされてしまった。
「……喧嘩はヤダよ、俺」
「喧嘩で彗に勝とうなんて、同年代の子には無理でしょ」
そもそも彗は見た目弱そうに見えるから、ナメられないかのほうがあたしは心配なんだけどね。
「その、男の子? いつ来るの?」
「夜って言ってた」
「ふーん」
聞いといて大して興味なさそうに相槌を打つ彗に、「あと4時間後くらいに来ると思う」と付け足す。
「その前に彗の荷物運んじゃおうね」
「うん」
夕焼けの街をふたり並んで、伸びた影を連れながらマンションに帰った。