「ヤッバ。ニヤニヤ止まらないわ。どうする、手とか繋がれちゃったら」

「え!? なな、ないよそんなこ、と!?」


頬を赤らめた有須の手を彗が掴んで、有須はビクッと肩どころか体全体を跳ねさせる。


クスクス笑う彗に有須は口をパクパクさせ、変わらず赤い頬のまま泣きそうな顔をした。


「やめてよぉ~。ビックリしたでしょっ!」

「ははっ」


有須と彗の会話を耳に入れながらふと廊下を見ると、大雅はじっとこちらを見ている。


「……」


俺と目があった大雅は軽く笑みを浮かべ、教室に背を向けて窓に寄りかかった。


「……有須、アイツ待ってるぞ」

「あ! うん! えと、じゃあ、あたし行くねっ」


慌ただしくカバンを肩にかけ、手櫛で髪を軽く直す有須を見送る。


「楽しんできてねー!」


凪の声に有須は振り向いて恥ずかしそうに手を振ると、大雅のもとへ駆け寄って行った。