僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「教えてもすぐ忘れるけどね」


ボソッと言った彗の背中に、凪は目にも止まらぬ速さで飛び蹴りをお見舞いした。


昇降口の柱に激突した彗を「ぎゃはは! 悲惨!」と祠稀は爆笑する。


あたしは凪の細い体のどこにそんな力と技があるんだろうと思いながらも、前のめりに倒れた彗に駆け寄る。


「すっ、彗! 大丈夫!?」

「痛い……背中が痛い……」

「ふん! 帰るっ」


彗が立ちあがっても凪は顔を背けて、祠稀はわざとらしく手の側面を顔の横に持っていった。


「暴力はいけないと思いまーす」

「祠稀に言われたくない!」


怒りながら先に歩き出した凪に、祠稀、彗と続き、あたしも1歩踏み出す。


「あ、有須ーっ」

「……あ。ふたりとも今帰り?」


不意に後ろから名前を呼ばれ振り向くと、そこには同じバレー部の仲間がふたり、笑顔で立っていた。